スタンフォード大学ビジネススクールのPfeffer教授が提唱する、Human Capital Management (人的資本管理)の7つの鍵(1.安定した雇用、2.戦略的採用、3.自己管理型チームと権限委譲を前提とした組織づくり、4.パフォーマンスに応じた報酬制度、5.従業員教育、6.マネジメントレイヤーの削減、7.情報共有)。今月号から2回に渡り、人財管理の基礎となる雇用について考えてみます。
1.安定した雇用
終身雇用制が揺らぎ、リストラは日常茶飯事。そんな流れの中で、会社に左右される人生ではなく、自らキャリアを創造してゆく人生を選ぶビジネスパーソンが激増している日本。そんな風潮の中、「人財管理の第一歩は雇用の安定から」などと書くと、時代遅れだと思われるかもしれません。しかし、雇用の安定を確保することができなければ、良い人財を確保することはできません。また、権限委譲するにも、会社の機密情報を共有するにも、その前提は、信頼できる優秀な人財を確保していること。そして信頼は、長期間のコミットがあって初めて醸成されるものです。雇用の安定は、人財管理の基本中の基本です。
昨今の厳しい状況下であっても、リストラやダウンサイジングはできるだけ避けるべきなのです。ダウンサイジングは一時的な利益にはなりますが、長期的に見ると多大なる損失、コストになるのです。
従業員の雇用の安定を実践している企業は、次のようなメリットを体験的に十分理解していると言えましょう。
革新的なビジネスプランの創造やドラスティックな生産性の向上は、レイオフの不安のない職場でこそ可能になる。
従業員が個人として蓄積した知識≪Knowledge≫を活用できる。
しかし最も重要なのは、安定した雇用を従業員にコミットするためには、戦略的な人事採用が不可欠だという点です。パフォーマンスの低い従業員全員に雇用の安定を保証しては、ビジネスとしては成り立ちません。雇用の安定をコミットし、かつビジネスのパフォーマンスを上げている企業は、少ない従業員数で、生産性を上げ、しかもクリエイティブなビジネスを展開しているのです。これは、非常に慎重でセレクティブな採用プロセスがあって初めて可能になるのです。
サウスウェスト航空はそのビジネスのユニークさで、何度もベストプラクティスとして紹介されていますが、人財管理の面でも秀でたものがあります。同社は雇用の安定を従業員との長期的関係構築のための最重要なツールとして位置付けています。また、レイオフをしないと最初に決めているため、採用は真剣勝負、かつ控え目になるわけです。結果的に雇用の確保は、同社に同業他社と比べて少ない従業員数で、より高い生産性をもたらしているのです。 |