スタンフォード大学ビジネススクールのPfeffer教授が提唱する、Human Capital Management (人的資本管理)の7つの鍵(1.安定した雇用、2.戦略的採用、3.自己管理型チームと権限委譲を前提とした組織づくり、4.パフォーマンスに応じた報酬制度、5.従業員教育、6.マネジメントレイヤーの削減、7.情報共有)。今月は戦略的採用と何か、を考えてみます。
1.戦略的採用
人財マネジメントとは、企業が利益を出すために必要な行動を社員に取らせる仕組みづくり、またそうした行動を自ら取っていける人財を確保することにつきます。従って人財を通じた利益確保に熱心な企業ほど、採用に厳しい基準を設けています。言うまでもなく、「儲かる仕組み」は企業によって大きく異なりますので、求める人財も違ってきます。しかし自社に合った人財を「選り好み」するプロセスには、いくつかの共通点があります。
多数の候補者をプールする
たくさんの履歴書を処理することは時間とコストの無駄に見えるかもしれません。しかし、本当に自社に合う人財を採用できる可能性はごくごく少ないのです。シンガポール航空のサービスには定評がありますが、同社は顧客との主要な「タッチポイント」であるフライトアテンダントを非常に重視しています。同社は多数の応募者の中から自社のクライテリアに合う人財だけをピックアップしています。応募者が少なければ、クライテリアを落とすことにもなりかねません。従って、常にたくさんの候補者を抱えるようにしています。
自社が必要とする資質(スキル、人間性)を明確にする。
サウスウェスト航空がフライトアテンダントに求める資質は、イニシアティブ、判断力、適応性、学習能力ですが、採用面接の際、これら一つ一つを確認する質問を投げかけています。
個々のポジションに求めるスキルと能力を明確にする。
求められるスキルや能力は、は少なければ少ない方が良く、一つ一つについて具体的にしておく。
これらは会社全体の市場への取り組みと整合性が取れていなければなりません。ある米国のレンタカー会社の顧客ターゲットは自動車修理工場。このマーケットにクォリティの高いサービスを提供することで、売上を伸ばす戦略をとりました。必要とされる人財は、修理工場のマネジャーと気軽におしゃべりができ、時には彼らを落ち着かせるようなタイプのセールス。そこで、大学の成績はほとんど考慮せず、体育会系(スポーツの話ができる)や男子学生クラブの所属していた学生をターゲットにしたのです。結果は大成功。ただ単に、「Best& Brightest」を求めるだけではダメなのです。
社風へのフィット
このあたりは日本企業採用の得意技。テクニカルなスキルはわりと簡単に取得できますが、人間性を変えることは不可能。また、会社の価値観と個人の価値観のベクトルが合っていなければ、会社が望むパフォーマンスを出せる可能性も低くなります。
インタビュー回数を増やし、シニアマネジャーを面接官に。
多面的かつ厳格な採用ができる、というメリットのほかに、候補者の会社に対する意識を高める効果もあります。採用は厳しく真剣であればあるほど、ロイヤルティやコミットメントが醸成されます。
採用プロセスの結果とパフォーマンスを常に測る。
採用が真剣勝負であればあるほど、人手とコストがかかります。個々の採用のプロセスを見直し、効率を高めるよう常にフィードバックするシステムが必要になります。 |