これまで、スタンフォードのPfeffer教授が提唱する7つの「鍵」のうち、雇用制度と採用についてご紹介してきました。今号からは、組織づくりへの鍵についてご紹介していきます。教授がまず強調しているのは、権限委譲を前提とした、自己管理型チームの重要性です。
組織作りは、チームとしての効率性を高めることからスタートします。一般的に、仕事に意欲的で、目標達成までの道筋を自ら管理している従業員は、生産性も高く、問題解決に向かって非常によく働くと言われています。複数の従業員の集合体であるチームにも同じ原則があてはまります。ある研究者は、「自己管理型チームで働いている従業員は、管理された伝統的な縦型組織よりもパフォーマンスがよく、仕事への満足度も高い」と結論づけています。
自己管理型チームには、3つの利点があります。「効率性の高い同僚間管理 」「よりクリエイティブな問題解決手法」「階層の排除」です。
自己管理型チームでは、一般にマネジャーではなく同僚がお互いに、有機的に「マネジメント」し合うことになっています。こうした「同僚間管理」を実施しているチームでは、メンバー一人一人が、自分たちのパフォーマンスが組織全体にどう影響するかを理解し、その結果、組織に対して責任とアカウンタビリティを持っていることを自覚していますので、結果として従来の縦型組織より効率が高くなるのです。
自己管理型のチームは、メンバーのさまざまなアイディアをプールし、「よりクリエイティブな問題解決手法」を提唱することが可能です。自己管理型チームを採用している組織は、この点を十分に理解しており、官僚主義やヒエラルキーをなくし、コミュニケーションと権限委譲を加速する情報システムを採用しているケースが多く見られます。
メンバー間での有機的なマネジメントは、従来、人を管理するためだけにお金をもらっていた「階層を排除」することにつながり、結果的に組織としてのコスト削減を可能にします。また、重要な決定権を現場の従業員に委譲することにより、よりスピーディで適切な判断を下すことができるようになります。
ここで問題になるのは階層の排除と、雇用の安定をどうバランスさせるか、という点でしょう。Pfeffer教授は、「階層を排除すること、イコールレイオフではない。ただ人を管理するよりももっと重要で組織に貢献できる仕事に、人財を再配分することが重要だ」と説いています。そのためには、従業員の報酬制度と、継続的な教育が不可欠です。次号ではこの2点についてご紹介します。
昨今の経済状況の中、実際のビジネスの現場で教授の主張を100%実現するには、難しいことも多々あります。人財を通じて利益を出していく企業に必要な人財政策を展開するには、企業経営戦略の骨格としての、長期的および包括的視点が不可欠でしょう。 |