社内ステイタスを減らしたフラットな組織や、組織での情報共有、ナレッジマネジメント。それらの有効性やパワーに関しては、過去様々な論文が出され、実証されてもいます。その根幹にあるのは、従業員一人一人が価値ある仕事をしていると感じ、フィジカルにもメンタルにも会社業績に貢献できることを幸せと感じる体制づくりです。
社内にあるステイタスの違いを極力廃止するには、タイトルの廃止、オフィススペースの平等化などシンボリックで目に付きやすい改革から、職務レベル間の給与システムの格差をなくすなど、組織変更や報酬制度に深く関連する施策まで、トータルな改革が必要です。特にシニアマネジャーとスタッフ間の「温度差」をなくすには、報酬制度に目を向けなければなりません。サウスウェスト航空やウォルマートCEOの報酬は、超一流企業のCEOにしては驚くほど低く(一桁以上違います)、またベースアップのフリーズなど従業員に「痛み」を強いるときは、自らの報酬をかなりダウンさせています。また、ステイタスの違いをなくす施策は、パフォーマンスに応じた報酬制度とリンクしていなければ意味がありません。実績をあげたグループなり部門なりを、トータルで評価し、報酬にもそれを反映させるここで、企業に貢献できなかった部門と差をつけることはモチベーションを高め業績向上に不可欠です。ここでおそらく問題になるのは、個人間のパフォーマンスの差にどう報いるか、ですが、部門、グループレベルで業績変動型報酬制度が適用されず、個人レベルだけでとどまっていると、モチベーションの低下が顕著になり、逆効果になります。
企業と従業員間の「信頼」を築き、スピーディに動くための前提条件としての情報共有の重要性については、改めて述べるまでもないでしょう。情報はただオープンにすればよい、というものではありません。従業員がその情報の意味を正しく理解し、デシジョンメーキングに有効活用できるかどうかは、教育や組織体制のあり方が大きく影響する点を、考慮しなければなりません。
これまでご紹介した人財管理の7つの鍵(1 安定した雇用、2 戦略的採用、3 自己管理型チームと権限委譲を前提とした組織づくり、4 パフォーマンスに応じた報酬制度、5 従業員教育、6 マネジメントレイヤーの削減、7 情報共有)。ある意味当たり前のことばかりで、オールドファッションでさえあります。雇用の安定は明らかに時代遅れでしょうし、報酬制度についてはシステマティックな科学的算出法が適用され、従業員教育は実施されるより「話題」で済まされるケースの方が多く、ステイタスの違いを削減するにあたってトップマネジメントの報酬にまで手をつける企業はほんの僅かです。しかし、どれもが多数の事例と綿密な研究に裏付けられています。そしてもっとも重要な点は、どの要素も密接に関連しており、ひとつだけを取り上げて議論しインプリても、意味がありまん。各要素の整合性が取れていないと、導入に際して逆効果を生むことさえあります。また、導入しても結果が出るまでにはある程度の時間が必要です。企業の中長期戦略のタイムラインとの整合性を取り、その期間内で何が達成できるか、を常に分析し検討する必要がありましょう。 |